熱波師

人生、どれだけ正気を失っていられるか。サウナで魂を解放するモデル「菅野結以」(後編)

女性ファッション誌『LARME』『PECHE』のモデルとして第一線で活躍しながら、音楽番組のラジオパーソナリティや自身のアパレルブランド『Crayme,』ディレクターなど、マルチに活躍する菅野結以さん。
そんな彼女は、2020年1月にサウナ熱波師の資格を取得するほどのサウナ偏愛っぷり。

前編では、これまでのサウナ体験と熱波師資格を取るまでの経緯について伺いました。後編の今回は、彼女のルーツの一つでもある音楽と偏愛遍歴についてお届けします。

菅野結以
雑誌『LARME』『PECHE』モデル。10代の頃から人気雑誌『Popteen』のモデルとして活躍し、カリスマモデルと称される。現在はモデルを務める傍ら、自身のアパレルブランド『Crayme,』のクリエイティブディレクターやラジオパーソナリティ、DJを務めるなど“文化系モデル”として幅広く活躍している。

サウナ=「陶酔・恍惚・解放」の場所

ーー2020年9月、東京都港区にある弘法寺で行われた「寺サウナ」イベントで熱波師として熱波を披露した菅野さん。寺サウナにはどういうきっかけで参加されたのでしょうか?

菅野:音楽が昔からずっとすごく好きで、普段はTOKYO FMの音楽番組でパーソナリティをさせてもらっていて。寺サウナさんから“ととのいミュージックプロデューサー”という役職をもらったんです。「サウナに合う音楽を選曲してください」って言われたので「自分がこの環境で聞きたい!」と思うものをベースに選曲しました。

熱いサウナ内では恍惚をテーマに選んで、リラックスするととのいスペースではアンビエントで陶酔感があるものをメインにセレクトして。

2020年9月に行われた「寺サウナ」での登壇の様子。

ーー菅野さんが仰るように、音楽が好きな人は情景やシチュエーションに合わせて音を選ぶじゃないですか。まさに、サウナ施設、水風呂、ととのい、全部音が違うっていう決め方があると思っていて、それをどう実現できるのだろうかと思っていたら、やっている人がここにいましたね。

菅野:めちゃくちゃ嬉しいです。せっかくやるならと思って、場所によって音楽変えた方がいいと思います、と提案したら受け入れてもらえて、その通りやらせてもらいました。

サウナって、音楽で得られるトランス状態に、日常的になれる体験に近いなって思っていて。私がたまに音楽で体験する「一つ向こう側の世界にいけるような感覚」を探している中で、新しく発見したのがサウナだったんです。ライブとか現場で感じるたまに行けるすごい感覚みたいな、エクスタシー状態に行けた感覚がサウナでもあって、だから音楽とサウナはすごく近しいなと思っています。

10年弱、TOKYO FMで音楽番組のパーソナリティを務めるほど音楽好きの菅野さん

ーーそういった「トランス状態」や「一つ先の世界」を求めてしまうのは、なぜなんでしょうか?

菅野:そうですね、私「人生、どれだけ正気を失っていられるか」が人生のコンセプトの一つでして。

正気でいたら、おかしなことがあまりにもたくさんある世の中だと思うし、その中で自分自身のフラットでピュアでまっすぐなところを取り戻せるものを探していて。何か夢中になれることや、音楽で一つ向こう側に行けるような感覚になれることとか。そういうものを探しているなかで、新しく発見したのがサウナだった、っていう感じですね。

ーーある意味、サウナにハマるのは自然な流れだったんですね。

菅野:そうですね。人生の大きなキーワード、「陶酔・恍惚・解放」なんですけど。この3つがすごく大事だなと思っていて。何かものを作る時も必ずそれを心掛けているし、何かを好きになる時もそれが大きい。日常的に魂を解放できるのがサウナだったんです。

ーーその3つの陶酔から解放までを何か具体的な事象で表すと…?

菅野:サウナそのものですね。

ーー(笑)。

菅野:具体的には何かに夢中になる時、恋に落ちる感覚というかそれに陶酔してそこから何か爆発的な喜びみたいなものが得られることがあって。

私はものづくりしている時に、“これが好き! 作りたい!”って酔いしれながら作って、アイテムができた時や、それによってすごくいい写真が撮れた時にすごい恍惚があって、作品をみんなが手にしてくれて心を解放されるみたいなことが結構あるんです。

ーーなるほど。恍惚ってどういう状態ですか?

菅野:それによって我を忘れるみたいなことです。我を忘れて無我夢中になって、そのアドレナリンやドーパミンがドバドバ出る状態をずっとやって死にたいというのがあります。

ーーそれが、正気を失っている状態ですね。

菅野:でも、それこそを正気とも呼ぶというか。実際それが正気でまともなんだけど、この世の中で生きるには正気でいると生きづらいじゃないですか。だから、普段はちょっとだけそういうふりをしながら生きたりもするけど、ちゃんと魂を解放して自分らしくいれる時間を作っています。

偏り続けた人生だからこそ、人の偏りを愛せる

ーー前編でも、“サウナの楽しみ方は人それぞれだから、自分のやり方を押しつけたくない”とおっしゃっていましたが、いつからそういう考え方になったんですか?

菅野:私、Instagramのプロフィールに“偏愛主義”って書いてあるんですよ。

ーーまさに『サウナランド』のコンセプトそのままですね!

菅野:気が合いますね!  自分が偏っているし、いつも好きなものと苦手なものがすごくわかりやすくある人生だったから、それもあって「これは絶対こう!」って決めつけたりしないようにしています。何においても“全員違う人間”って思っているから。だから、人の偏りをすごく愛せるし、みんなが違うことを許せるのかもしれないですね。

ーーいつからその考え方になったんですか?

菅野:うーん、子供の頃からずっとそう思ってます。小学生の時に全員同じ時間、同じ授業を受けて、同じルールにはめられてしまう感じが、すごいストレスでした。だから、学校は合わないから早めに離脱しよう! と決めていて。小3の時に(笑)。

ーー小3!

菅野:それで本当に早く離脱したんですけど、その時に自分の得意と苦手が極端だったんですよ。国語音楽美術はすごく得意だけど、数字を見ると頭が痛くなるみたいな。
興味ない部分を捨てて得意分野を突き詰めたかったけど、学校だとそれが許されないのって何でなんだろうって思っていて。

絶対得意をひたすら伸ばして苦手を捨てて、苦手なところはそれが得意な人に任せて一緒に生きて行った方がいいって思ってました。その頃からずっとその思想です。

ーー周りからの圧力とか、“人に合わせなきゃ”って感じたことはなかったですか?

菅野:ないですね。”だって、自分の人生じゃん!”みたいな感じがあって。あまり人に言われてどうこうしたことがないかもしれません。

学校行けって言われても「絶対もっといい道ある」って思って、高校1年の数ヶ月で勝手に退学した時に、“学歴なんてなくても楽しく生きていけるっていうことを、人生で証明しよう”って決めました。ちゃんと稼いで、ちゃんと好きなことやって、ちゃんと自分の人生やって、親にも返すみたいな。

ーーすごい。

菅野:一度決めたらやるしかないので、一生懸命やれば絶対できるって感じですね。
本当に“好き”だけで生きてるので、「自分が好き!」って思ったことだと自信が持てるんです。好きなことだと努力できるから、得意にできるって思うと迷いはないです。

だから、“これ好きかな?好きじゃないかな?”くらいの熱のものには手を出さない。「めちゃ好きー!」と思うものだけを全部仕事にしてきました。

好きすぎて「氷も」仕事になる

ーー今までお話を伺ってきた中で、「音楽・サウナ」がすごく好きだということは伝わってくるんですけど、このレベルで好きなものって他にありますか?

菅野:それでいうと「氷」が好きなんですよ! 氷!

取材中、3回くらいおかわりした「氷」

ーーまさかの氷! 氷が好きっていうのは、かき氷が好きとか、ドリンクに入ってる氷が好きとか、どのレイヤーで…?

菅野:全レイヤーです! もう、氷という物質を愛しているんですよ!
氷は本当に素晴らしいんです。私の精神安定剤のひとつですね。どの現場にもコンビニで売ってるアイスコーヒー専用のカップの氷を、コーヒー入れないで使ったりしてます(笑)。

ーー箕輪さんと同じですね(笑)。ハイボール入れてます。

菅野:なんと!(笑)。元々、凍らせたもの全般が好きなんです。アイスとかも好きだし。なんでも凍らせたい人だったんですけど、大人になって突き詰めていったら「私は氷が好きなんだ!」ってことに気づいて。

もはや味なんかなくていいって思い始めました。かき氷自体もすごい好きで、いつかプロデュースした時のために家でシロップの研究などをして密かに準備をしてきたという感じです。

ーーそんな大好きな「氷」も、もしかしてお仕事に?

菅野:なるんですよ! やっと! ずっとかき氷をプロデュースしたいって言ってたんですけど、この夏ようやく話がきまして。やったー! って思わず叫びました。

ーーほんとに全部仕事にしてる! すごい(笑)。菅野さんが思う、氷の魅力って何ですか?

菅野:一番は冷たいのがいいですね。よく美容家さんとかが、女性は体を冷やさないために白湯を飲むのをおすすめしてるんですけど、正直全然美味しくない、何これって思ってしまって。ごめんなさい(笑)。飲んでた時期もあったけど、無理して飲んでも心が健康にならないって思ってメンタル美容に切り替えました。

正しい美容法を全部捨てて、自分のメンタルが生き生きして、“めちゃくちゃセロトニン出るー!”みたいなことだけを追求しようと思ったんです。主宰しているオンラインサロン『不道徳美育講座』では、世の中的には道徳と反しているけど、好きなことやっていると人ってすごく生き生きして肌も綺麗になっていくから、白湯の代わりに一生キンキンに冷えた水を飲み続けるスタイルを提唱してるっていう(笑)。

世の中の常識的にこれは良くないってことを一旦無視して、自分の心に正直になることをすごく大事にしています。

続けることで「絶対に伝わらせてやる」と思った

ーー本気で好きだから、ちゃんと熱が伝わって仕事になるんですね。

菅野:音楽の仕事を始めた頃は、”モデルが何音楽好きとか言って”みたいな感じで、舐められポジションだったんですよ、ビジュアル的にも。今は大人になったから、まだ舐められないんですけど。本当に20代前半で見た目も派手だと、どんなに好きって言っても、ぬるく思われるというか。

それが悔しかったので、とにかく続けることをめちゃくちゃ大事にして、ラジオも5年続けてようやくちょっと認められるようになりました。

ーーすごいですね。

菅野:それまでは番組にゲストが来ても、”こんな小娘に何が分かるんだ”みたいな態度の人も結構いたりして。

ーーえー!

菅野:でも、続けることで絶対に伝わらせてやると思ってやってきたんです。音楽の仕事も10年くらい続けてなんとかなったし、氷も好きと言い続けて10年くらいになったし。

ーー(笑)。

菅野:サウナはまだ超初心者なので、好きになってまだ2,3年しか経ってないんですけど、この本気度が伝わればいいなって思います。

ーーこれからサウナ仕事を増やしていきたいとおっしゃっていましたが、すでに考えていることありますか?

菅野:私、サウナ公式化粧水を作りたいんです。やっぱりサウナって湿度が低いところが多いので、肌とか乾燥するじゃないですか。それをこの間Clubhouseのイベントで話したんです。そのイベント内で「サウナ公式ドリンクとかはあるけど、化粧水はないから作りたい」って言ったら、そのイベント終わった1時間後くらいに化粧品会社の人から連絡をもらって「うちで作りましょう」みたいになって。

あと、熱で髪が痛むので、サウナ前に塗って保護するトリートメントを作りたいですね。

ーー今化粧水やトリートメントの話もありましたけど、他に何か構想はありますか?

菅野:トリートメントや化粧水とかもそうですけど、サウナにまつわることで「これがあったらいいのにな」って思うものがたくさんあります。プロデュースしたり作るのが得意なので、それを活かして今サウナーの人たちが欲しい商品を作っていきたいですね。

あと、せっかく熱波師もモデルとして表に出る側もやってるんで…サウナ施設のモデルもやりたいです。サ旅しつつ、熱波もちゃんと鍛えていきたいしっていう。

ーージム行ってますもんね!

菅野:(笑)。あとは、サウナ×音楽はまだまだ伸びしろあると思うので、サウナDJもやりたいですね。コロナで全部イベントが飛んで最近やってなかったので、是非呼んでください!


「好きなことを全部仕事にしてきた」という菅野さん。
ロウリュ好きの本気を見せるために熱波師の資格を取ったり、そのために初めてジムに通うなどのストイックさは、まさに“偏愛”のなせる業でした。

熱波師としてもサウナDJとしても、今後の活躍が楽しみです。


撮影地のご紹介:東京新宿天然温泉テルマー湯

今回、撮影にご協力いただいた東京新宿天然温泉テルマー湯は、美肌効果や疲労回復を促す温泉やロウリュ、ミストサウナなどのサウナ、カフェやレストランなどが揃った温浴施設。

テルマー湯の2Fの浴室にある高温サウナ(男性専用:約90度、女性専用:約85度)は、3段形式で15分間隔で作動するオートロウリュ式です。なお、男性専用は定期的にスタッフがロウリュするサービスもあり。

水風呂も同じように男女で特徴が異なります。男性は水温が15度、水深が80~110cmの唐辛子水風呂。深さ・水温ともにバッチリですね!そして女性側はサウナ入り口のすぐ横に備長炭水風呂。備長炭の浄水、消臭、保温効果が期待できます!

女性の浴室にはピンク色に輝く北欧サンゴライト化粧水風呂なるものが! お肌を潤すために必要なカルシウムとマグネシウムが世界で最も有名な美肌化粧水と同じ2:1の理想比率で配合されておりお肌に優しい弱酸性(ph5)、要は化粧水の中に身を投じているようなもの! サウナだけでなくこの北欧サンゴライト化粧水風呂でしっとりとしたもちもちのお肌が実感できます。

当然、お風呂も見逃せません。テルマー湯の最大の特徴は露天風呂「神代の湯」。ここは静岡県伊豆市にある「神代の湯」から毎日運搬されている天然温泉を使用しています。そして、別名「美人の湯」と呼ばれるお湯は、美肌効果、冷え性改善、疲労回復などへの効果が期待できます。

4Fの岩盤浴エリアにあるヴァルカンでは、熱波師のロウリュを男女ご一緒に楽しめます。

現在、土日祝日限定で15時〜20時の間30分に1回『茶(Tea)ロウリュ』を開催中!アールグレイ、ダージリン、アップル、ほうじ茶などの芳香を纏ったロウリュは、リラックス効果、疲労回復、ストレス解消などをもたらします。
サウナ初心者の方からヘビーサウナーまで幅広い層に人気のテルマー湯。ぜひ足を運んでみてください!

※現在新型コロナウイルスの感染対策によりロウリュ・サイレントロウリュなどの各種イベントの開催が変更になる場合があります。詳しくは施設でお問い合わせください。

施設名東京新宿天然温泉テルマー湯
住所東京都新宿区歌舞伎町1丁目1-2
アクセス・都営新宿線、東京メトロ丸ノ内線・副都心線 「新宿三丁目」駅E1出口より 徒歩約2分
・JR線「新宿駅」東口より 徒歩約9分
・東京メトロ副都心線、都営大江戸線 「東新宿」駅 A1出口徒歩9分
電話番号03-5285-1726
営業時間10:00〜23:00 (最終受付22:00)
公式サイトhttps://thermae-yu.jp

インタビュー・編集/浅見 裕河地 真里
執筆/黒羽 大河
写真/M.RYOHTA
書き起こし/氷上 太郎隅倉 文子清水 えまい竒藤 宏源田 光広浅見 裕・Yoko Ishikawa・奥田 佑佳