アウトドアサウナ

薬草グツグツのサウナから川の水風呂へ。徳島の奥地にある「谷のサウナ」シモノロ・パーマネント

森の香りや鳥のさえずりを感じながら楽しめる大自然のサウナ。全国各地のさまざまな場所で自然と一体になるサウナが登場する中、徳島県の端っこ、四国の中央あたりに位置する徳島県三好市には「谷のサウナ」と呼ばれる場所があります。

森林率が86%の秘境にできた「谷のサウナ」は、地元で採れる薬草を使った“薬草サウナ”が特徴。しきじの薬草サウナが突如秘境に現れたということでしょうか…

今回は、この「谷のサウナ」で体験できる“薬草サウナ”をご紹介します!

廃校をリノベーションして生まれた秘境サウナ

廃校となっていた旧下野呂内小学校を改修して作られた複合施設「シモノロ・パーマネント」。カフェや宿泊施設、デザイン事務所や保育園まで併設されていて、沢山の人たちが訪れています。

こちらが「谷のサウナ」。徳島の秘境の地にできた、完全セルフビルドのサウナです。

看板に描かれている「谷のサウナ」のロゴはサウナのもくもく、水風呂のさらさら、休憩のそよそよのイメージから作られたとのこと。スタイリッシュで可愛いです。

こちらが4人ほど入れる広さのサウナ室内。中は、木と薬草の香りがただよい、薬草を使ったサウナらしさを感じられます。

薪ストーブの上にはロウリュ用のサウナストーンと薬草やアロマが入っているお鍋が。薬草を煮つつロウリュができるスタイルですね。

スタッフさんに火を入れてもらい、サウナがあたたまるまでしばし大自然の中で森林浴タイムを楽しみます。

サウナに入れるようになるまでは、暖かい季節で30分、寒い季節で1時間ほどかかります。(事前にあたためてもらっておくことも可能)

薬草の蒸気で満たされたサウナ室で蒸され、清流に流され、自然の中でととのう

ストーブに火を入れてしばらくすると、薬草鍋からグツグツと煮える音が。地元でとれた色々な薬草が調合されていて、とてもいい香りがサウナ室内に充満していきます。

薬草が沸騰してから少し時間が経つと、カメラが一瞬で曇るぐらいまで湿度が上がります。スチームサウナなので温度は少し低めですが、薬草効果か物凄い汗の量が出ます。

サウナ室の窓から見える川が谷のサウナの水風呂、取材当日の水温は約16度でした。汗をかいて、シャワーを浴びずにそのまま川に飛び込むスタイル!

たっぷりと汗をかいた後はそのまま目の前の川へドボン。足はしっかりつくけど、川で流されることもできる、ちょうどいい深さです。

自然の中でのととのい。木々が揺れる森の音、川のせせらぎ、鳥の鳴き声、目を閉じると様々な音がよりクリアに聞こえてきます。

自然の中でととのった後は、併設されているカフェでサ飯。この日は豚の角煮カレーでした。(日によってサ飯の内容が異なります)

全てグルテンフリーのもので、豚肉は近くの養豚所から。カフェの中でも外の庭でも食べれるよう、キャンプスタイルで提供されます。

カフェの中では看板猫のすーちゃんが走り回っていて、一緒に遊ぶことができます。猫好きには堪らないはず。

施設内では山羊も飼っていました。時折聞こえる鳴き声がとても可愛く、癒されます。

宿泊やコワーキングスペースとしても利用できる、谷のステイ「晴耕雨独」。晴耕雨独は、晴れたら好きなことをし(耕し)雨の日は独り静かに籠る、という意味。

▲実際に泊まった方の声。価格は宿泊費+食事代(サウナ代別)

サウナハットを作るワークショップも不定期で行っているとのこと。カラフルなサウナハットが並んでいました。

最後に、シモノロパーマネントを運営するハレとケデザイン舎の代表、植本修子さんにお話を伺いしました。

森林を循環させながら、みんなで作ったサウナ

ーサウナを作ることになったきっかけを教えていただけますか?

植本さん:私自身はサウナーではないのですが、知り合いが徳島県の神山町で「森のサウナ」というのをやっていて、森の中にあるサウナ小屋で皆が楽しむ雰囲気がとても気に入ったのがキッカケです。

森林の保全や山を蘇らせるために間伐をして、伐採した木を製材してサウナ小屋を作る活動に感銘を受け、オマージュの意味で「谷のサウナ」を作りました。

ーなるほど、そういった経緯だったんですね!サウナはどうやって作られたんですか?

植本さん:うちのスタッフで西さんという元大工のおじさんがいて、基本的にうちの造形物は全部その方がひとりで作っているんですよ。それで別の場所に鶏小屋を作った際に、アウトドア好きの友人が「これサウナ小屋にしたら可愛いんじゃない?」と言ってくれて、サウナ小屋を建てることにしました。

写真提供:シモノロ・パーマネント

ーえ!? じゃあこのサウナ小屋も西さんが一人で?

植本さん:はい、そうです。西さんが全部一人で作りました(笑)

元大工のおじさん、西さん
写真提供:シモノロ・パーマネント

ーそうだったんですね!それは凄い(笑)実際にサウナを作ってみてどうでしたか?

植本さん:作ってはみたものの、「サウナとしていいのかどうか」が全然分からなかったんです。はじめはサウナストーンを積んでロウリュするだけだったのですが、ストーブの小ささもあり、正直サウナとしては少し弱いなと悩んでいました。サウナをオープンして半年ぐらいして、西さんが「いい匂いだからサウナにどう?」と取ってきてくれたのがクロモジでした。クロモジというのはアロマオイルの世界では高級品なんですが、それが近くに自生してるのでみんなで山に取りに行ったりしています。それをお鍋に煮たら凄くいい匂いで。それから近所の農業やってる方がニッキをくれたり、スダチのアロマオイルを作る会社さんから出涸らしをもらったりして、基本的には近隣にあるもので今の薬草サウナが作られています。

ー地域のみんなで作っていっている薬草サウナなんですね。

植本さん:はい、出来るだけこの地域のもので作っていきたいなと思っています。それと、サウナがキッカケに出会える人も増えました。ハレとケデザイン舎は「ハレとケ珈琲」というカフェからのスタートだったので、元々お客さんは女の子ばかりだったのですが、若い男の子が増えました。私自身よく分からないまま、とりあえずサウナイキタイに登録したんですが、それを見て来られた方が凄く多かったんです。

ー先程、森林保全に感銘を受けたキッカケでスタートしたサウナと伺いましたが、森林活動については現在何かされてるんですか?

植本さん:本格的に活動をスタートしたのはごく最近なのですが、たまたまウチのスタッフのひとりが森林に関する活動をしていて、そのスタッフを中心に徳島県の補助金を活用しながら山の管理をしています。およそ10人ぐらいのメンバーで山に入って木を切ってきて、薪にしたり何か物を作ったり、そういった活動をしていこうと考えています。

ー素敵な活動ですね!最後に今後の展望は何かありますか?

植本さん:サウナを作ってみて、沢山の人に喜んでくれるのが本当に嬉しくて。今後は近くにあるハレとケ珈琲で「山のサウナ」を作ろうと思っています。北欧サウナにはこだわりたいので、テーマは「自然と繋がることができるサウナ」です。遠くから来てくださるお客様も多いので、宿泊の施設を整えていきたいなとも思っています。「山のサウナ」はできれば年内にオープンできればなと思っています。

ー山のサウナ、楽しみです!貴重なお時間ありがとうございました。


徳島の山の奥地にあった「谷のサウナ」は、廃校をリノベーションしたり、地産の薬草を使ったり、はたまた森の循環の取り組みをしたりと、さまざまな角度からサスティナブルで自然に近いカタチのサウナを実現していました。

ただ気持ち良いだけでなく、そうした文脈とともにあるサウナだからこそ、さまざまな人の繋がりを生み、また地域資源の循環を生む中心になっていくものだと感じました。

ぜひ足を運んでみてください!


施設名シモノロ・パーマネント(谷のサウナ)
営業時間10:00~18:00分(最終受付16時)
※ナイトパックの場合は翌朝9時まで
※同日2回目以降は薪代1000円
※ナイトパック利用の場合はモーニングサウナも可
定休日不定休(ご予約の際にご確認ください)
料金
【サウナ】
一般料金→2500円
四 国 割 →1500円
子ども割→1000円
同日2回目以降は追加料金1000円

【レンタル】
ポンチョ、タオル、ドライのTシャツとハーフパンツ、サウナハット

【個室】
個室→400円
ナイトパック(翌朝10時までの個室利用)→5000円
食事→夜食 2500円、朝食1200円(朝食はコーヒー付き)

【キャンプ】
1サイト8000円(ソロキャンのお一人さまは3000円)、焚火は薪のご購入でご利用可
住所徳島県三好市池田町西山中塚1093 旧下野呂内小学校
公式サイトhttps://shimonoro-p.jp

取材・執筆:北添 義幸
編集:浅見 ゆたか
撮影協力:久田 元太
取材協力:石田 竜介