施設サウナ

アップデートが止まらない。ガラパゴス的進化を遂げた高知の偏愛サウナ「SAUNAグリンピア」

ー ととのい特化型サウナで骨抜きになる

日本全国各地に次々と新しいサウナが誕生する中、その場所に「サウナ愛があるか」は誰しもが意識してしまうポイント。サウナが好きで好きでたまらない人が作ったサウナは、やはり神は細部に宿るところにこだわりがあります。

そんなサウナ愛に満ちた偏愛系サウナが四国は高知県に誕生しました。その名も「SAUNAグリンピア」。

有名サウナが集まるわけではない高知県に突如として現れ、ガラパゴス的に進化を遂げたサウナを取材しました。

高知市内の“普通の場所”にある異色のサウナ

SAUNAグリンピアは、高知駅から車で約6分と中心地から少しだけ離れた場所にあります。

現地に近づくと少し遠くからも「SAUNA」の文字が… テンションが爆上がりします。そう、まるで静岡「しきじ」の看板が遠くに見えた時のあの高揚感のように。

なんの変哲もない街のはずれに、突如として現れる「SAUNAグリンピア」。砂漠にオアシスを見つけた気分です。

遠くから見えていた看板はこちら。まるでフィンランドのコティハルユサウナを思い起こさせる「SAUNA」の文字。SNS映えとはこういうことです。

※コティハルユサウナ=フィンランドの首都ヘルシンキ市内にある最古の公衆サウナ

早速、中に入り受付を済ませます。(雑誌サウナランドも置いていただいております。ありがとうございます! )

グリンピアは、オリジナルグッズも豊富。オーダーメイドで購入できるTシャツやパーカーも売っています。(後日発送なので、遠方から来ても荷物にならず嬉しい)

受付が完了したら水着に着替えましょう! グリンピアは水着着用の上で、男女混浴となります。2階にある更衣室には男女それぞれシャワーを完備。

更衣室から出て眺めるサウナエリアがこちら。
元々廃工場だった場所をリニューアルして作ったグリンピア。何もない場所から、ゼロイチでサウナを作り出したオーナーの偏愛が詰め込まれています。今からそれを、あらゆるところで垣間見ることに…

では、サウナ室へ向かいましょう!

神は細部に宿る。偏愛サウナの真髄を味わう

サウナ室は広め。温度は約80℃に設定されており、十分な熱さを感じます。明かりはベンチ下の照明と、入り口ドアから差し込むわずかな光だけ。加えて、壁と天井が漆黒なこともあり、とても暗めな室内です。

ベンチは2段で、座面は奥行き60cmの“あぐら”がかける設計に。一度ベンチを作ってみたものの、サイズ感に納得ができず、全て解体して作り直したそう。

写真では少しわかりにくいですが、実は天井も低め。ロウリュ後に蒸気が高い天井に逃げてしまわないように、後から天井を低く改良したそう。

グリンピアは、このような試行錯誤と実験のPDCAが高速回転しているのが特徴。スタートアップベンチャーならぬ、スタートアップサウナがグロースハックし続けているということです。胸熱。

ヒーターはmisaストーブを使用。70kg以上積まれたサウナストーンは、こまめに行うロウリュにも耐えられるように、しっかりと熱されています。

また、ロウリュはなんと「じょうろ」で行います。「ロウリュでじょうろ?」と思われた方、違うんです、ここにもすごいこだわりがあるんです。

じょうろの先端につけられたノズルは、デリケートな「蘭の花」専用のもので、ソフトで均一な散水ができる特殊仕様。誰でも適度なロウリュができるよう、考え抜いてこのノズルに至ったそう。ちなみに蘭の花用のノズルでロウリュするから「ランリュ」というそうです(笑)。

サウナ室を出てすぐ横に水風呂があります。導線完璧すぎじゃないですか?
水温は13℃前後。季節に応じて必要に応じてチラーを活用するなど、水温にはかなり気を使って調整をしています。広さも十分な水風呂は、見るだけでよだれが出そうです。

水風呂を作るコンクリートの壁。もはや美しさすらあります。

シャワーで汗を流したら、脇目も振らず水風呂へ! (周りの方に配慮の上、入りましょう) 最高。十分の広さがとても嬉しいですね。

休憩スペースでは、思い思いのスタイルで過ごせるよう椅子やベッドが多くそろっています。

贅沢に並ぶインフィニティチェア。しかも扇風機も余すことなく配置しており、完全にととのいに誘っているのがわかります。

休憩スペースにある謎の小瓶です。
塩? なぜ塩が…

インフィニティチェアでリラックスしながら天井に目を向けると、月が浮かんでました。
「ファああ、綺麗だなあ…」と、月に意識をもっていかれます。完全にととのってますね。ちなみに休憩スペースには小鳥のさえずりが響き、目を閉じると森の中にいるような感覚にすらなります。

ちなみに、道端で外気浴も可能。普通に道路に面しているので、ととのってると登下校中の小学生に醜態を晒すことになりますが、まあ良いでしょう。ととのってると何も気にしなくなります。
(現在は遮蔽されているので直視されずらくなっています)

最近ではととのう縁側、その名も「ととの縁側」も登場しているそう。また行きたくなるじゃないですか。

オロポ(オロナミンC+ポカリスエット)をはじめ、サウナドリンクやアルコール類もあります。オロックス(オロナミンC+アイスボックス)というグリンピア発祥のドリンクもあります。ぜひお試しを!

ちなみに、休憩スペースにはこんな冷蔵庫も。何が入ってるのかな、と開けてみると…

はい、水です。水を冷蔵しています(笑)。その温度、5℃前後。

ととのうための、ちょっとしたテクニック。冷水をすくったおけにタオルを染み込ませて、軽く絞ったら…

横になって目元にタオル当てましょう。すると… 今まで感じたことのない感覚が襲います! 身体は火照ったまま、冷水のタオルが目元を通して脳が冷やされ、深い深いディープリラックスへの誘います。これは初体験、すごいです。

グリンピアは、午前中の貸し切り時間以外は14〜23時まで時間無制限で利用可能。時間さえ許されるなら、ずっとループし続けてしまいそうです。

また、タオルではなく“板で仰ぐ”グリンピア独自の熱波サービス「熱波ネル」も適宜開催。ぜひ熱波も合わせて楽しんでみてください!

最後に、この偏愛系サウナを作り上げてしまったオーナーの吉永さんにお話を伺いました。

ととのうことも知らなかったけど、あったらいいなを積み重ねてきた

ーグリンピアを作ったきっかけを教えていただけますか?

吉永さん
小さいころ父親とよくサウナに行ってたのですが、ご飯を食べたりマッサージしたり、大人の楽しい遊び場みたいなイメージがあって、その頃からサウナには「楽しい」というイメージを持っていたんです。

本業は内装仕上げ工事の会社を経営しつつ、グリンピアのアップデートに日々勤しんでいる吉永さん

ーそんな原体験を持ちつつ、自分でサウナ作るきっかけになったことはあるんでしょうか?

吉永さん
きっかけは、おととし下北沢の高架下やっていたサウナイベントに参加したことです。

当時はまだフィンランド式とかも分からず、サウナにはいわゆる“施設のサウナ”のイメージしか持っていなかったから、女子が水着着てパーティみたいにみんなでサウナに入ったりしているのをみて、ものすごく楽しそうって思って。

※下北沢のサウナイベント=2019年1月〜3月に下北沢の高架下で行われた「 CORONA WINTER SAUNA SHIMOKITAZAWA

それに参加して、初めてロウリュを浴びたんですよね。もう、めちゃくちゃ気持ちよくて、それでサウナに対して「楽しい」「気持ちいい」の二つの感情が芽生えたんです。

ーなるほど。そこから実際に自分で高知でサウナをやることに。

吉永さん
そうですね、下北沢みたいな空気感の場所を作るに、どこかいい場所がないかなって探してて、たまたまここが空いてて。予算がないので、とりあえずサウナと水風呂と更衣室だけ作ってやってみようかなと。

物件を借りた直後の様子。確かに面影はしっかり感じるものの、ここからグリンピアを作り上げたのはすごい…

ーおもしろい。ちなみにサウナグリンピアの名前やロゴがとても印象的なんですがこれは、どういうインスピレーションとかヒントがあったんですか?

ひとめでサウナとわかる、イケてるグリンピアロゴ

吉永さん 
まず名前ですが、グリーンピア(大規模年金保養基地の施設)という格安で遊べたり、癒されたりする保養所施設が日本全国にあって、よく家族で行っていたんですよ。それを僕が子どものころ「グリンピア、グリンピア」って言ってて(笑)。
“大人が疲れを癒す場所”=グリンピア、のイメージがあって、そんな場所にしたいなということで「SAUNAグリンピア」にしました。

ー吉永さんの思い出からの名前! そのストーリーを知ったら、いっそう愛着が湧きました。

吉永さん 
ロゴや看板もめちゃくちゃ悩んで。悩んで悩んで、最終的にはシンプルでいいかと思って。結局、サウナってシンプルじゃないですか? だからシンプルにしていこうかなとなと。

名前を押し出すというよりは、サウナということを知ってほしかったので「SAUNA」の方を大きくして、一目でサウナだってわかるようにして。あと、このロゴはサウナストーンをイメージしてて…

ーえ!?山じゃないんですね(笑)! 衝撃。

吉永さん
「クリスタルカイザーをモチーフにしました?」とか「パタゴニアをパクりました?」ってよく言われて(笑)。全くそんな意識はしてなかったんですが。

ーちなみに、フィンランドとか海外のサウナには行かれたことあるんですか?

吉永さん
いや、ないんですよ!

ーすごい! 絶対に海外のサウナからインスピレーションを受けてると思いました。でも、ナチュラルに異国情緒を感じましたね。シンプルに突き詰めていった結果、今のグリンピアに至ってる。

吉永さん
サウナ師匠の秋山さんがいらっしゃった時も「ここは、海外のどこかを真似しました?」って言われて、「僕の感覚だけでやってます」って言ったら、「凄い面白い!」って喜んでいただいて(笑)。「日本ぽくない」っておっしゃっていただいたんですよ。

ーあと、細かいところのこだわりを聞きたくて。まず、休憩スペースの周りにあるこのふさふさしたカーテン、これはなんでしょうか(笑)?

休憩スペースを覆っている謎のカーテン

吉永さん
あ、これはですね、これが無かったらただの工場なんで(笑)。オープン前に体験として知り合いの女子に何人か来てもらったんですよ。ワイワイして華やかなイメージになるかなった思ったんですが、「なんか、工場っぽいの嫌や!!」って言われて(笑)。「ちょっとなんかで隠してくれたらいい」っていうので、目隠しを考えたんですね。でも、外気浴をするのに風も抜けて欲しいし、なんとなく緑もあった方がいいかなって思って、最終的にサバゲー用の迷彩カーテンを使って。

ーサバゲー用のカーテンなんですね! あるものでなんとかしちゃう力が凄すぎます。

吉永さん
観葉植物にしようと思ったらお金がすごいかかっちゃうので(笑)。そういう工夫でいろいろ作っているのがグリンピアなんですよ。
この照明もパーティのような雰囲気を出したくて選んだものですね。下北沢で体験したあの「楽しいサウナ」を再現したくて。

休憩スペースの照明に使われている、電球が連なるストリングライト

ー休憩スペースに塩があったんですが、あれって?

あれは、塩分補給です。サウナって「水分補給をしてくださいね!」とはいうけど、「塩分補給もしてくださいね!」とはあまり言わない。言ってもスポーツドリンクを摂取してくださいとかなので。であれば、お客さんの方でお金払ってスポーツドリンク飲んでもらうなら、無料で塩を出すのもいいかなと。水も出しているので、水分補給も塩分補給も、どちらも提供しています、ってことですね。

塩はシンプルに塩分補給用だった… 岩塩など、少し高級な塩が使われている

ーあと、音楽もなく、聞こえてくるんほ鳥のさえずりですよね?

吉永さん
そうです。そもそもぼく、サウナを始めた頃、「ととのう」って概念を知らなかったんですよ。オープンした当時、テクノみたいなダンサブルな曲を流してて、お客さんに「この音、ととのわないんで止めてもらえますか?」って言われて(笑)

それで「ととのう」を調べて、初めて知ったんです。なるほど、みんなこの「ととのう」を求めてるんだ!ってわかって。下北沢で初めてロウリュを味わった時も、気持ちよかったけど特に「ととのう」ことは知識としてなくて。

それがわかったら、ダンサブルな音ではなくて「あ、じゃあ鳥だな」って思って、鳥を放ったんですよ(笑)。(鳥を放つ=鳥のさえずりを流す)

どこからともなく鳥のさえずりが聞こえてくる休憩スペース

ーサウナ室のこだわりを教えていただけますか?

グリンピアではパネルを使ったアウフグース(通称:熱波ネル)を僕がやっているんですが、自分だけめっちゃ汗かいて暑くなってるのに、お客さんは全然温まらなくて破壊力が足りないなと。こっちは汗だくなのに、みんな熱くて出ていくみたいにならなくて…。じゃあ、天井低くしてロウリュがダイレクトに届くようにしたらどうかなって思って、天井を低くしました。

ー後からサウナ室の天井を低くって…!すごい。

あとは、ベンチですね。あぐらをかけるようにしたいなって思って。元々作ってた、45cmくらいの奥行きのものをいったんバラして、全部作り替えて。あぐらをかける座面の奥行きにしたんです。で、部屋の暗さも真っ暗にして、温度計も見えないくらいに(笑)。

で、最後はソフト面で、サウナ内の私語を禁止したんですよ。自分のゾーンに入ってととのって欲しいから、知り合い同士も距離をおいて、話をしない。自分に向き合って欲しい。そういうルールを作りました。

サウナ室での禁止事項。コロナに関わらず、このポリシーがあるそう。

吉永さん
サウナストーブは元からあるものなので、あとは室内をどう変えるか、の戦いでしたね(笑)。一回でスポーン! ってなるようなロウリュにしたくて。細かい調整をしました。

ー今後の展開は?

ほんと、グリンピアは完成しないサウナなんです。サグラダ・ファミリアのように。
なので、常に進化し続けるのですが、今やりたいことは、小さくてもいいので薪ストーブのサウナを作ることですね。あと、もし2店舗目を出すとしたら、海外にいきたいです。

ー海外はさすがに胸熱ですね!すごい。

また、誰もやったことないチャレンジをするのが僕たちらしいかなって思って。


サウナ激戦区東京からは遠く離れた、四国は高知県という場所にできたSAUNAグリンピア。「サウナはこうあるべき」という常識とは一切かけ離れた、好きで好きでたまらない愛を注いだ結果、ガラパゴス的に最高のサウナに育っていったことが窺いしれました。

SNSでもグリンピアのアップデートが次々に行われている様子が伝わっており、何度でも足を運びたくなります。

ぜひ、SAUNAグリンピア目掛けて、高知まで足を運んでみてください! 合わせて「ひろめ市場」に行くと、昇天してそのまま高知に住みたくなりますよ。

施設名SAUNAグリンピア
営業時間月〜土 14:00-23:00
日・祝日 13:00-21:00
休汗日火曜日、月1回3連休(日・月・火)
料金大人1,500円、20時以降退館の場合は2,000円(日曜・祝日は終日2,000円)
※全て税込
貸切 2,500円(2名まで3,000円)
手ぶらセット:500円(フィットネス水着 / バスタオル)・サウナポンチョ300円
住所高知市南川添18-30
公式サイトhttps://www.grempia.com/

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新の情報は直接取材先へお問い合わせください。


文・写真:浅見 裕